夫婦関係が破綻して離婚に至った場合、離婚原因によっては慰謝料請求することができます。
離婚後の生活維持のためにも慰謝料請求のことは考えておきたいですが、「大変そう」「揉めるんじゃないか」と不安要素も多く後回しにしてしまう人もいることでしょう。
子どもとの生活を守るためには養育費に加え、慰謝料請求することでしっかりと財産を確保することもとても大切になります。
この記事では慰謝料請求できる離婚理由や慰謝料相場、請求方法について解説していきます。
『慰謝料』とは?
『慰謝料』とは、離婚原因にともなって与えられた精神的苦痛や損害に対して請求できるものです。
夫婦の片方に明確な離婚原因があり、離婚原因を作った側は相手に慰謝料を支払わなくてはなりません。
たとえば夫に不貞行為があって離婚する場合、妻は夫に対して慰謝料請求できる権利が発生します。
慰謝料請求には、離婚原因の他にも婚姻期間も考慮され、協議離婚の場合は慰謝料額・
支払い方法を話し合って決めることになります。
また、離婚後トラブルを回避するためにも条件等を記載した離婚協議書を作成しておくと安心です。
慰謝料を請求できる離婚理由には何があるの?
慰謝料請求するには、離婚理由が重要なポイントになります。
離婚理由・婚姻期間によって精神的苦痛も酷かったと見なされ金額が変わるからです。
この項目では、5つのケースに分けて慰謝料請求できる離婚理由を解説していきます。
浮気・不倫
相手の浮気・不倫が離婚理由の場合、慰謝料請求することができます。
「何度も浮気・不倫を繰り返された」「浮気相手(不倫相手)が妊娠・出産した」となれば精神的苦痛も大きなものであったと判断され、慰謝料額も多く請求することができる傾向にあります。
この場合、不貞行為の相手すなわち不貞相手にも慰謝料請求することができるのです。
ただし、「慰謝料請求金額は一定である」ということに気を付けなければいけません。
離婚相手と不貞相手がいるため、二人に慰謝料請求したいと考えても、精神的苦痛は一つです。
その一つに慰謝料が発生するのですから有責配偶者または不貞相手から慰謝料を受け取って、さらに慰謝料を受け取ることは二重取りという行為になってしまいます。
たとえば慰謝料が500万円と確定したら、有責配偶者・不貞相手の二人合わせて500万円を請求できるということになり別々に請求した場合、オーバーした分は受け取ることができません。
また、離婚慰謝料請求するときに浮気・不倫した事実の証拠提出が必要です。
- ホテルに入る写真
- 事実を認める発言・文章
- 不貞相手の妊娠・出産証明書
- 領収書、クレジット明細
- 探偵・興信所の調査報告書
※ここでいう証拠提出とは、裁判所に提出して認めてもらいやすい証拠を指します
などが有効とされており、この証拠集めこそが慰謝料請求するための重要事項です。
不倫相手配偶者(夫が不倫した場合、不倫女の夫が該当)も同様の請求をすることができるため二人から慰謝料請求され不倫の代償を思い知ることになるでしょう。
借金
夫婦のため、家族のために借金したのではなくあくまで個人のために借金したうえに、夫婦関係を続けていくのが困難になった場合、慰謝料請求できることがあります。
- ギャンブル
- 風俗・キャバクラ通い
- 浮気相手に貢ぐ
などで借金したものは個人の借金になるため慰謝料請求の対象です。
家のローン・車のローンなど夫婦で使うものに対しての借金は慰謝料対象外になるので覚えておきましょう。
このケースも証拠が必要になります。
通帳のコピーやクレジット明細のコピー、家計簿などを集めておくと良いでしょう。
ただし、夫婦関係を続けていくことが困難になるくらいの借金をする相手ですから支払い能力を考慮し、慰謝料の支払い方法や条件をきちんと話し合い取り決めておくことが大切です。
DV・モラハラ
近年増えつつあるDV(家庭内暴力)・モラハラ問題。
暴力・精神的暴力・人格否定など形はどうあれハラスメントを受けた場合、離婚慰謝料請求することができます。
DV・モラハラを受けた回数・期間・被害内容によって慰謝料の金額は変わりますが、請求する側にハラスメントを誘導するような行動があったかどうかも慰謝料の額に影響を与えます。
請求するときは、診断書・証拠写真・記録など準備しておきましょう。
いじめ
義理両親、義理の親戚からのいじめや嫌がらせが離婚理由になり、配偶者が仲裁に入ってくれなかった場合もその責任から慰謝料請求することが可能です。
いじめ期間・内容・度合いなど証明できるものがあると良いでしょう。
その他
「生活費を支払わない」「勝手に出て行った」「家庭を顧みない」といった婚姻関係を維持するために必要な責務を果たさず離婚になった場合、相手の就業状態や期間に応じて慰謝料請求できる可能性があります。
また、夫婦間での性交渉は拒否されているのに不倫相手とは肉体関係を持っている場合、権利侵害行為と見なされ、請求金額に大きく影響します。
離婚慰謝料の相場はいくらくらい?
離婚慰謝料の相場は、度合い・内容・期間・回数など離婚原因によってさまざまです。
相談する弁護士によっても多少の誤差は生じるでしょう。
そこでこの項目では、あくまで一般的な指標として離婚慰謝料の相場を紹介します。
離婚協議
離婚協議とは、夫婦で話し合いお互いに離婚に合意したら離婚届を出しにいくことであり、日本ではごく一般的な離婚方法です。
協議離婚では、離婚慰謝料についても話し合いますが、養育費・財産分与などで収支の兼ね合いがあるため離婚慰謝料の相場が当てはまらない可能性が高くなります。
離婚慰謝料を多額に請求してしまうと養育費が滞ってしまったり、住宅ローンがあれば財産分与に影響する可能性も考えられます。
このように離婚慰謝料以外の離婚条件も考慮し話し合いを進めましょう。
分割払い
離婚慰謝料は損害が生じたその日から支払い義務が発生します。
有責配偶者にとって想定外の慰謝料額だった場合、一括で支払うことができない可能性は極めて高いです。
そうなると離婚慰謝料を分割で支払うことになりますが、支払いが滞ることも予想できるので事前に離婚協議書の条件に関して公証役場で公正証書を作成しておきましょう。
もしも、離婚慰謝料が滞ったときに残金一括払いや支払いが遅れた分に遅延損害金をつけることができます。
トラブルが起きた際も、公正証書に基づいた離婚慰謝料強制執行が可能です。
一般的に離婚慰謝料は現金で支払います。
しかし、「まとまった資金がない」「住宅ローン・養育の支払いから分割払いも困難」となれば残された手段は夫婦の共有財産の住宅を譲渡する『住宅分与』を求めましょう。
もちろん他に共有財産(資産)があれば、話し合いが必要です。
住宅分与を求める際に、住宅ローンが多額に残っていればローンの支払いを有責配偶者に負担してもらうことで実質的に住宅を譲渡されたことになります。
請求権のある者は、住まいの確保ができるので比較的受け入れやすい条件でしょう。
住宅分与
一般的に離婚慰謝料は現金で支払います。
しかし、「まとまった資金がない」「住宅ローン・養育の支払いから分割払いも困難」となれば残された手段は夫婦の共有財産の住宅を譲渡する『住宅分与』を求めましょう。
もちろん他に共有財産(資産)があれば、話し合いが必要です。
住宅分与を求める際に、住宅ローンが多額に残っていればローンの支払いを有責配偶者に負担してもらうことで実質的に住宅を譲渡されたことになります。
請求権のある者は、住まいの確保ができるので比較的受け入れやすい条件でしょう。
離婚慰謝料を請求する方法
離婚慰謝料を請求するために請求手続きや流れを知っておきましょう。
あくまでも、配偶者に離婚原因があると認められる場合の慰謝料請求方法です。
離婚慰謝料の請求方法は大きく分けて、「交渉による慰謝料請求」と「裁判による慰謝料請求」に分けられます。
一般的には、交渉で配偶者や不貞相手に慰謝料を請求し、話が上手くまとまらなければ、裁判へと移行します。
弁護士を立てて交渉すれば、どちらにしてもスムーズに話が進むでしょう。
交渉によって慰謝料請求を行う場合
交渉によって慰謝料請求したいと考えている場合、書面で請求する方法と電話や話し合いで請求する方法があります。
どちらの場合でも、話し合いが合意にいたれば、その協議内容に関して公正役場で公正証書を作成しましょう。
公正証書を作ることで、夫婦間の合意に証明力と執行力がともない、約束を反故にされることも少なくなります。
それぞれのメリットデメリットについて詳しく確認していきましょう。
書面で請求するメリットとデメリット
書面で請求するメリット・デメリットは以下の通りです。
<メリット>
- ・離婚を望む相手と会わなくて済むため冷静に交渉を進められる
- ・書面でのやり取りのため回答に時間がかけられ作戦を練りやすい
- ・離婚相手や該当する不貞相手がいるならばそれらの人に本気度が伝わる
<デメリット>
- ・やり取りに時間がかかり交渉が長期に渡る可能性がある
- ・離婚相手や該当する不貞相手に時間と猶予を与えてしまう
電話・話し合いで請求するメリットとデメリット
電話や話し合いで請求するメリット・デメリットは以下の通りです。
<メリット>
- ・お互いの主張を現在進行形で伝えられるため早期解決になりやすい
- ・相手に考えて準備する時間を与えない
<デメリット>
- ・しっかりと記録しておかないと「言った言わない」の水掛け論になる
- ・瞬時の対応が求められるため十分な準備をしておかないと失敗するリスクがある
裁判によって慰謝料請求を行う場合
話し合いで慰謝料請求が上手くいかなかった場合には「離婚調停」「離婚裁判」と段階的に裁判が進み、そのなかで慰謝料請求を行っていきます。
「離婚調停(調停離婚)」では、双方が代理人を立てて離婚内容の話し合いを家庭裁判所で行うことになります。
代理人は、弁護士がほとんどですが、裁判所の許可が下りれば親族や友人がなることも可能です。
基本的に裁判官と代理人が同席していないときには夫婦が顔を合わせないように控室を分けたり、調停の開始終了時間をずらすなどの配慮がなされます。
裁判とお伝えしましたが調停は第三者を加えた話し合いです。
したがって、調停人や代理人に話がまとまるよう妥協を勧められたり説得されたりするようなことがあっても、内容に合意しなければ、強制されることはありません。
条件や希望に不満がある場合には、納得いくまで協議しましょう。
「離婚裁判」は、裁判で離婚や慰謝料請求の詳細など離婚条件を決定します。
基本的には調停での協議を経ていることが条件になります。
裁判所が和解案を提示することがありますが、和解が成立しなければ裁判所が離婚の可否と離婚慰謝料を含む離婚条件を決定するという流れです。
離婚調停と離婚裁判の間に「審判離婚」という段階があります。
審判離婚は、離婚調停で慰謝料請求・財産分与・養育権など重要な部分についてはほとんどお互いの合意が得られているにもかかわらず、些細な部分で協議がまとまらない場合や一方がさまざまな事情で不在の場合に、裁判官が離婚を成立させる判断を下す離婚のことです。
慰謝料請求について話がまとまらないような場合には、審判離婚が行われることはほとんどないので、予備知識として覚えておく程度にしましょう。
離婚慰謝料についてQ&A
離婚慰謝料について多くの人が悩みを抱えています。
こちらでは、離婚慰謝料について不安や疑問を回答していきます。
養育費と慰謝料が合算される?
子どもを連れて離婚する場合、養育する側に養育費を支払う義務があります。
離婚慰謝料は、精神的苦痛や損害に対して支払うものになり、まったく別物です。
したがって、養育費をもらったからと言って慰謝料がもらえないことはありません。
ただし、相手の支払い能力や収支の兼ね合いによって離婚慰謝料・養育費が多少増減することもあります。
性格の不一致でも慰謝料もらえる?
性格の不一致だけが離婚理由の場合、慰謝料請求するのは難しくなります。
離婚の原因に、法に反することや損害が受けた事実がないからです。
特段、法律で性格をどうこう言うことはできませんし、個人差もあることなので基本は請求できないと把握しておくと良いでしょう。
しかし、「相手が慰謝料に同意した」「性格の不一致以外にも離婚理由がある」場合は慰謝料請求できます。
「相手が慰謝料に同意した」場合は協議によって夫婦間で条件を話し合うのが良いでしょう。
「性格の不一致以外にも離婚理由がある」の場合は、性格の不一致以外の離婚理由で請求を試みてください。
慰謝料請求するのに時効はある?
結論から言うと離婚してから3年が時効になります。
浮気や暴力など不法行為に基づく慰謝料請求権に「時効」が存在し、期間は「損害と加害者を知ってから3年間」か、「慰謝料請求できる状態になってから3年間」です。
よって、離婚して3年以内なら慰謝料請求できるので事情によって早く離婚したい場合は先に離婚してしまってから離婚慰謝料申し立てをすると良いでしょう。
相手の年収や正しい計算方法から算出してもらった離婚慰謝料を自分たちのために使おう!
離婚慰謝料は、離婚原因・期間・回数・度合いなどから金額が決まります。
また、相手の支払い能力によっては違った形での支払いになるかもしれません。
すべて自分で行うことは到底不可能なので、離婚専門家・弁護士さんに相談しましょう。
正当な離婚慰謝料をもらい、教育資金に回したり、住まいの確保に役立てたりしながら子どもとの生活を有意義なものにしてくださいね。
まとめ
- 離婚原因がある側の人は慰謝料を支払う義務がある
- 慰謝料額は離婚理由・婚姻期間・精神的苦痛度合いによって金額が変わる
- 慰謝料請求するのに離婚原因の証拠が必要になる
- 慰謝料料請求の時効は「離婚してから3年」
- 正当な離婚慰謝料をもらい、教育資金・住まいの確保に役立てよう!